行動ファイナンス

行動ファイナンスを知る重要性

投資家は、必ずしも数量的に合理的な投資判断ができるわけではありません。投資判断には、心理効果による不適切なバイアス(偏り)が入ることは多くあります。この偏りは、今日では行動ファイナンスとして、学問的にも広く研究されています。

行動ファイナンスを学び、心理効果とその性質を知る事は、より望ましい投資判断に結びつきます。ここでは、投資判断に影響を与える心理効果を紹介します。



確証バイアス(confirmation bias)の影響について


確証バイアスとは

最初に得た情報や第一印象を、重視・偏重してしまう傾向です。この効果によって、最初の情報を裏付けるデータは良く見つかる一方で、最初の情報を否定するデータは軽視してしまいがちになります。


資産運用における確証バイアス


銘柄に関する確証バイアス
良いと思った金融商品に投資した際、保有期間中にその商品に対する新しい情報が随時入ります。この際、確証バイアスによって、良いニュースは耳に入りやすく、悪いニュースは黙殺してしまう事があります。

このため、確証バイアスは「予想外の業績下方修正でも、保有を継続してしまう」などの、弊害の要因となります。


手法に関する確証バイアス
投資家は、良いと思った投資手法で資産運用しているはずですが、確証バイアスによって、その投資手法のメリットについての情報は良く目に留まり、デメリットについての情報はなかなか目に留まらなくなります。

また、その投資手法で、うまくいった時の事が印象に残り、うまくいかなかった時の事は印象に残りにくくなります。

このため、確証バイアスは運用手法の改善の妨げの要因となる事があります。


確証バイアスによる悪影響を避けるためには

この確証バイアスの効果を認識した上で、悪いニュースにも十分注目していく事が大切になります。



「早すぎる利確」「遅すぎる損切」を招く心理効果(The Disposition Effect)

投資家は、利確は早く行い、損切は躊躇し遅れる傾向にあります。これは The Disposition Effect と呼ばれています。


利確は早く、損切は遅くなる理由

利確をすれば、儲けが確定します。この際、「実力で儲けた」という気持ちになり、満足感を味わえます。このため、利確は早めになってしまいます。

一方で損切をすれば、「投資は失敗に終わった」と認める事になります。これは気分のいい事ではありませんので、結果として損切は遅くなりがちです。


早い利確と遅い損切の弊害

利確を早くして、損切を遅くしていれば、利確の多い取引になります。「確定利益>確定損失」となり、利益に多くの税金がかかります。その分、リターンを圧迫してしまいます。

また、この取引は「トレンド」に逆行する事になります。「投資家が利確をした株は、平均で2.35%も市場平均を上回り、保有し続けた株は、平均で1.06%市場平均を下回った」という調査もあるようです。

確かに「売った株ほど上がって行く」という現象は、結構ある気もしますね。


売却に関する心理効果には注意が必要

このように、「利確を早くしてしまう心理効果・損切を遅くしてしまう心理効果」が存在します。この心理効果に惑わされず、合理的な投資判断を行いたいものです。



上昇相場でリスク過多を招く「ハウス・マネー効果(The House Money Effect)」


「ハウス・マネー効果」とは?

利益を得た投資家が、より大きなリスクをとろうと考える心理効果の事です。株式投資等で得た不労所得は、働いて得た所得と比べて、リスクに晒し易くなる傾向にあります。


上昇相場では特に「ハウス・マネー効果」に注意を

確かに、儲かった時はその資金でもっといろいろな金融商品を買いたくなります。また、儲かった場合、「もっと多めに賭けていればもっと儲かっていたのに」と思い、次回は掛け金が増えるかも知れません。

ですがこれらは冷静さを欠いた投資判断となりえます。「儲ける→掛け金を増やす(浪費する)→負ける→退場」というのは、ギャンブラーが身を滅ぼす典型パターンの1つです。


上昇相場でこそ冷静に・慎重に

儲けた時には、このような心理効果によるバイアスがかかる事を意識した上で、合理的で冷静に、最適な投資判断をしていきたいものです。

上昇相場でこそ、「ポートフォリオのバランス」や「個別銘柄のファンダメンタルズ」などによく注意を払い、チャンスがあれば売り抜けて、「キャッシュ」を確保する事が大切です。



運用に対する自信過剰(over confidence)


オーバーコンフィデンス(自信過剰)とは

資産運用におけるオーバーコンフィデンスは、「(実際はそんな事ないが、)自らが選んだ銘柄は、株価指数よりも大きく上昇するはず」という考え等、自身の運用能力に対する自信過剰を指します。

オーバーコンフィデンスの弊害

自信過剰になりますと、結果の出ない不必要な売買が増えるため、手数料負けする等の弊害が出てきます。



集団心理(group dynamics)

身近に「□□投資で儲けた!」というお話が複数出て来ますと、自分も「□□投資」というよく分からない投資をしてみたくなるものです。ですが、そう思うのは「集団心理」なる心の働きが関わっていて、それが合理的判断を妨げている可能性がある事に注意が必要です。


集団心理と、非合理的判断の危険性

所属するある社会の中の構成員が、みな同じ事を言っていると、人は、それが正しい事だと錯覚をする事があります。社会の中での同調性や、立場を守るために、そのような心の働きが備わっているためです。これが「集団心理」です。

ところが実際には周りの人が合理的で正しいという保証はありません。

周りの人が勧めているからといって、「□□投資」が儲かるとは限りません。「□□投資」の是非を自分で考えるより先に、「□□投資」をしたい、と思ってしまう点が、集団心理の怖さです。


集団心理に踊らされて、投資で損をしないために

①「集団心理」という心の働きと、それが非合理的判断に結びつく可能性を認識しておくこと。
②自分自身でも情報を集め、論理的に判断すること。

この2点が大切です。



参考





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  • 最終更新:2013-11-12 02:39:44

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